まったくもって面倒くさい。いつもより声もテンションも大きいし、姫様にでもなった気分なのだろうか? いや、いつも姫様のように振舞っているが。それでも今日は、いつもより激しいというか、何というか……。
「うるさいなぁ。たまには酒に呑まれて、何もかも忘れたい時だってあるだろう。お子様のお前に言っても分からないか……」呂律があまり回っていない。
「どうしたんですか、先輩らしくないですよ」
「私しくらしくない? 何を言っている、普段通りだろう……」
普段通りなら、涙なんか見せないだろう。前にサークルのコンパで飲んだときは、泣き上戸はしていなかった。男として、というのも何だが、女に涙見せられると困るんだよなぁ。どうしたらいいかわからないし。何やっても裏目に出そうな気がする。
「なぁ後輩、私は明日出て行くよ」
「はい? 何か言いました?」ビールの缶を片付けていてよく聞こえない。
「明日、ここを出て行く……」
「ようやくアテでも見つかったんですか? それはそれは……」
ふざけてみたものの、先輩は宙に視線を漂わせている。何かを決心したようにも見えた。
「何故、出て行くんですか?」
「世話になったな……」
「何故、出て行くんですか?」少し声を強める
「ん、あぁ……、私は元々一人だからな」
「そうですか」
「だから、でていk……」
「でもそれは元々でしょう。今は俺がいます。それにアビーも……」僕の真面目な声に、アビーもにゃーと相槌をうって、先輩に寄り添った。「先輩、ここに居てください」
先輩は泣きすぎて真っ赤になった眼を丸くして、僕を凝視している。
しばらくして、大声で泣きながら体当たりされた。
「何するんですか、ちょっと痛いですよ……。先輩……?」
「私は性格が悪いし、育ちだってわるい、お前に迷惑ばかりかけて悪い……」
ぐだぐだ言うのがむかついて、僕は先輩に口づけをした。
ビールの味と、涙の塩辛い味がした。


